教育無償化より有能?「奨学金返済控除」を新設して負担軽減を実現!

今や、大学生の2人に1人が頼っていると言われている奨学金。奨学金のほとんどは有利子の借金であり、大学卒業後も多くの方が返済に苦しんでいます。

最近では、安倍首相の「人づくり革命」の一つである教育無償化の動きもあり、公的機関による給付型奨学金制度も始まりましたが、まだまだ対象者は少ないというのが正直なところです。

とは言えど、給付型奨学金の財源は税金であり、いくら「人づくり革命」だからといって簡単に拡充できるものではありません。

ただ、貸与型奨学金は未来への負債になります。そこで税金には依存せず、少しでも現大学生、そして未来の社会人の負担を軽減するための新制度を、2級FP技能士の視点から考えてみました。

新制度、その名も「奨学金返済控除」

「奨学金返済控除」とは、私が提案する所得税制度の一部に新設する新しいシステムです。ということで…

まずは所得税の仕組みを簡単に説明

まず、日本の所得税制度について見ていきたいと思います。所得税とは稼いで得た収入に課される税金のことです。課税方法として、日本では累進課税という制度を導入されています。

この制度は年間の所得に応じて、課せられる税率が変わってくるというものです。つまり、多く稼げば稼ぐほど、高い税率が課せられるということです。

ただ、これでは酷です。そこで、日本では「所得控除」という制度を導入しています。この制度は、年収からある一定額を差し引くことで、課せられる税率を低く抑え、納税者の負担を軽減するものです。日本には14種類の所得控除があります。

“差し引く” というと実際に年収の一部を没収されるのではないかと思われますが、そういうことではありません。この “差し引く” というのは見た目で収入を差し引き、その差し引いた見た目の年収に課税するということです。

例えば、あなたがA国の国民で年収300万円だったとしましょう。このA国では年収251万円以上300万円以下の方には税率10%、年収250万円以下の方には税率5%を課し、そして全員一律に50万円の「B控除」という「所得控除」を導入しています。

このおかげで、あなたは本来10%の税率が課せられるにもかかわらず、「B控除」によって見た目として50万円分差し引かれるので、見た目の年収が250万円(この所得のことを課税所得といいます)になり、税率が5%で済むということになります。先ほども申し上げた通り、年収が高ければ高いほど高い税率が課せられるので、あなたは課せられる税率を5%分を得したということです。

ではもう少し現実的な世界、日本の場合で見ていきましょう。ここでは学生を例に所得控除の効果を見ていきます。

皆さんは「103万円の壁」という言葉を聞いたことはありますでしょうか? おそらく学生でアルバイトをされている方はこの壁を気にしながら働いていると思います。

なぜなら、この壁を超えてしまうと、両親の扶養から外れ、所得税の納税が必要になるからです。このなんとも言えない中途半端な103という数字は、まさに年間の所得控除の合計額を表しているのです。内訳を見て行きましょう。所得控除には14種類あります。ここには、そのうちの「基礎控除」と「給与所得控除」が含まれています。 

「基礎控除」とは全員一律に無条件で適用される控除で、その控除額は38万円です。「給与所得控除」とは給与所得を得ている人、すなわち経営者に雇われている従業員、要するにサラリーマンやアルバイトの人に適用される控除で、その控除額は最低65万円です。この2つの控除額を合計すると103万円になります。

税法上の控除の手順とは異なるが、簡略化して図式化するとこのように表せる。

これが俗に言う「103万円の壁」のことです。本来は1円以上稼げば “所得” を得ることになるので、所得税の納税が必要になりますが、所得控除のはたらきにより壁を超えなければ、所得税の納税を免除されるのです。

つまり、ある学生の収入が103万円以下であれば、所得控除の合計103万円が適用されるので、見た目では収入はゼロ(収入103万円以下-所得控除103万円=ゼロ)ということになり、そのゼロに税率をかけてもゼロなので所得税がかからないということになります。これが所得控除の仕組みです。

「奨学金返済控除」について

本題に戻ります。この「奨学金返済控除」を今ある14種類の「所得控除」に新設しようというのが、私の提案です。この「奨学金返済控除」とは、ある年に返済した奨学金の額分をその年の控除額にするというものです。例えば、年間で30万円奨学金の返済をした場合、その年の「奨学金返済控除」額は30万円になるということです。

これは、大学を卒業した社会人だけではなく、在学中に奨学金を返済することもできる収入のある高校または大学に在学する生徒も対象にします。奨学金返済の多くは銀行口座による振替ですので、振替証明書などを保存しておくことで、奨学金返済の証明をします。

もしくは、奨学金機関による証明書等の発行によるものでもよいでしょう。また、この「奨学金返済控除」は「扶養控除」と併用できるようにします。

補足
扶養控除とは?
扶養控除とは、主に子どもを養っている両親に適用される所得控除です。子どもが所得税を納めていなければ、両親は子ども1人につき、子どもが16歳以上18歳以下または23歳以上であれば38万円、子ども19歳以上22歳以下であれば63万円の控除が受けられるのです。

「奨学金返済控除」の意義

「奨学金返済控除」の意義は主に2つあります。

負担軽減と経済活性化

まず1番に思いつくのが納税者の負担軽減です。所得控除額が増えれば、当然に納税額が減るのは言うまでもありません。ただ、経済活性化とはどういうことでしょうか? ここで学生を例に見ていきましょう。

先程、「103万円の壁」というお話をしました。これは基礎控除(38万円)と給与所得控除(65万円)の合計です。もし「奨学金返済控除」という新しい所得控除を導入すれば、控除額の合計を増やすことができます。例えば、学生であるみくりさんは、奨学金返済のためにアルバイトを頑張り、年間で102万円稼ぎました。1ヶ月8万5000円です。

毎月みくりさんは3万5千円を奨学金の返済に、2万円を将来のための貯蓄に、1万円は家計に入れ、残り2万円を娯楽に使っています。

ひとこと
ちなみに筆者は逃げ恥のみくりさんの大ファンです。ガッキー最&高

ここで「奨学金返済控除」を導入した場合で考えていきましょう。みくりさんは1ヶ月3万5千円、年間42万円を奨学金の返済にあててますので、奨学金返済控除額は42万円になります。すると、基礎控除(38万円)と給与所得控除(65万円)に、奨学金返済控除(42万円)が加わりましたので、「145万円の壁」になりました。

このことから何が言えるのかというと、奨学金の返済のために稼いだお金は、収入にカウントせず、所得税の対象外にするということです。

つまり「145万円の壁」のうち、奨学金返済控除42万円分を差し引いた、103万円分までは所得税が非課税なので、現在の収入102万円のうち奨学金返済にあてた42万円を差し引いた60万円、すなわち103万円までの残り42万円までさらに稼ぐことができ、その稼ぎをさらに貯蓄するなり、家計に入れるなり、娯楽に使うなりと自由にできるわけです。

もし、みくりさんが娯楽に使う分を増やして、欲しいものを買ったり旅行に行くなりして、個人の消費が増大すれば、結果的に経済に貢献でき、活性化させることができます。

税金に頼らない制度

給付型奨学金は国の税金によって賄われています。もし、大学生・短大生全員に給付型奨学金を適用して教育無償化を実施した場合に必要な総額は3.1兆円と言われています。

全国の大学・短大の授業料は総額約3・1兆円に上る。幼児教育からすべて国が負担すれば、5兆円規模に膨らむという試算もある。簡単に財源を得られる政策ではないことを、はっきりさせておく必要がある。ー 出典:産経新聞

もし、この給付型奨学金を全員対象にしようものなら、消費税を上げるか、身を切る改革をするか、あるいは国債を発行するかしないとできず、身を切る改革を除いて、すぐに簡単に実行できるものでもありません。

それと比較して、私が提案する「奨学金返済控除」は制度を新設するだけで、特に税金が必要になることもありません。また、学生の多くはもともと所得税がかからない103万円以下の収入内で働いているので、この新制度を導入したからといって、税収が減るわけでもありません。

もし、収入が豊富にある社会人で所得税を納めている状況下において、新たな所得控除を導入したところでも、多少の税収は減るくらいで、教育無償化の観点から考えれば微々たるものではないでしょうか。

また、この「奨学金返済控除」の導入によって負担が軽減され、個人の消費が増えれば、税収が減るどころか、逆に税収が増えることにつながり、大げさに言えば財政健全化の道も見えてきます。

もちろん、教育無償化と比較すると負担軽減は少ないかもしれませんが、教育無償化には財源の確保が必要で、今すぐに実現できるものではありません。 

少しでも奨学金を借りている人の負担を減らすことを考える中において、早急な措置としてあるいは恒久な制度として「奨学金返済控除」を新設することは有意義なことではないでしょうか。